シンとトニーのムーンサルトレター 第050信
- 2009.10.03
- ムーンサルトレター
第50信
鎌田東二ことTonyさんへ
オリンピックの次回の開催場所がブラジルのリオデジャネイロに決定しましたね。国際オリンピック委員会(IOC)は2日にデンマークの首都コペンハーゲンで総会を開き、2016年夏季五輪開催都市を決める投票を行ないましたが、その結果、東京は第2回目の投票で落選しました。アメリカのシカゴは第1回目の投票で落選しました。
オバマ大統領や鳩山首相が自ら行なった渾身のプレゼンテーションも実らなかったわけです。でも、わたしは鳩山首相のプレゼンのスピーチの内容は興味深く感じました。なぜなら、近代オリンピックの創始者であるピエール・ド・クーベルタンの名前を出していたからです。わたしは、もともとクーベルタンという人物に非常に関心があり、かつて『遊びの神話』(東急エージェンシー、PHP文庫)という本に書いたことがあるのです。クーベルタンの注目すべきところは、近代オリンピックを単なる巨大なスポーツ競技大会に終わらせず、古代のオリンピック祭と結びつけて神話性をもたせた点です。
さて、鳩山首相はクーベルタンの理想と自らの理念をつなぐキーワードとして「友愛」を強調していました。今回の政権交代の以前からずっと発信されているキーワードです。この「友愛」は、いわゆるフリーメーソンの思想であることで知られています。鳩山首相の祖父である鳩山一郎は日本を代表するメーソン(フリーメーソン会員)であったことで有名ですね。メーソン思想の名著として名高いクーデンホーフ・カレルギーの『自由と人生』や『友愛の世界革命』なども自ら翻訳しているほどです。鳩山一族の「友愛」思想のルーツは明らかにこのカレルギーにあります。フリーメーソンの実体は、もちろん一部のトンデモ本や陰謀本で言われているような世界征服を企む悪の秘密結社などではありません。東京タワーのすぐ隣に日本ロッジがあり、わたしも訪れたことがありますが、フリーメーソンの正体とは一種の慈善団体にすぎません。ただし、非常に儀式をというものを重視している点が、秘密結社としてのイメージを作っているのかもしれません。
それにしても、ついに実現した政権交代、キーワードとしての「友愛」、驚くべきCo2の25%削減計画、100年に一度の世界経済不況・・・その背景には、フリーメーソンの思想があったように思えてなりません。フランス革命、アメリカ独立革命、明治維新を実現させたイデオロギーは、まさに「自由」「平等」「友愛」の三原則でした。鳩山氏がマスコミから何を訊かれても、「友愛です!」と答えているのは、世界中のメーソンへのサインのようにも思えます。
フリーメーソンというと、ほとんどの人はあまり良いイメージを持たないのではないでしょうか。それは、ロスチャイルドをはじめとしたユダヤの国際金融資本と結びついているとか、世界中で革命と戦争を仕掛けてきたとかいった負のイメージの影響もあるでしょうが、何よりもフリーメーソンの正体がよくわからないからということに尽きるのではないでしょうか。その徹底した秘密性が、あらぬ誤解を生んでいくのです。
わたしは、これからの日本社会、さらには国際社会の流れを読み解くにはフリーメーソンの知識が不可欠だと確信し、ここ最近、数十冊の関連図書をかため読みしてきました(もちろん、トンデモ本は除外しています)。その結果、思ったのですが、フリーメーソンの姿がよく見えないのはそれもそのはず、フリーメーソンという団体はある意味で名称変更しており、今では誰でも知っている有名な団体に変身を遂げていることに気づきました。
その団体とは、ずばり「国連」です。フリーメーソンがフランス革命にどこまで関わったかについては諸説ありますが、アメリカ独立革命の首謀者であることは間違いないとされています。つまり、フリーメーソンがアメリカをつくったのです。1ドル紙幣にフリーメーソンのシンボルが描かれていることはあまりにも有名ですが、現在、世界中に400万人いるメーソンの半分はアメリカに在住しているそうです。アメリカ合衆国には、1万3000のロッジがあり、歴代の大統領のうち、初代のワシントンからロナルド・レーガンまで、16人がメーソンでした。
アメリカという国は、さまざまな国からの移民の集まりですから、人種や宗教を超えたフラタニティ(友愛団体)が必要とされ、フリーメーソンを発達させたのでしょう。アメリカ合衆国の英語名は「The United States」です。そして国連の英語名は「The United Nations」です。「States」と「Nations」の違いはあれど、その組織づくりの方法論はまったく同じなのです。つまり、アメリカは各州が、国連は各国が結びついたものだということです。
フリーメーソンは国連に姿を変えた。もちろん細かい部分を言えば、いろいろと論議を呼ぶでしょうが、わたしは大筋においては間違っていないと思っています。ですから、鳩山首相が国連で「Co2の25%削減」を宣言したのは、フリーメーソンの檜舞台に上がって、一世一代の大見得を切ったように思います。フリーメーソンは、世界統一国家をめざしていますので、現在の最大のテーマは地球環境問題なのです。Co2の25%削減という仰天プランも、ここから生まれているのではないでしょうか。
そして、地球環境問題とともに、フリーメーソンの一大テーマが「人類の平和共存」です。やはりメーソンであったレッシングの『賢人ナータン』にも描かれているように、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の三大一神教における宗教対立の解決がメーソンの目標でもありました。わたしが愛してやまず、ポストカードまで作成したミュシャの「主の祈り」も同様のテーマですが、ミュシャは天上の月を人類平和のシンボルとしました。そのミュシャも薔薇十字会やフリーメーソンの会員であったことがわかっています。
フリーメーソンは「普遍思想」とか「超宗教」とか、どうも、これまで、わたしが考えてきたことを先取りしているような気がしてなりません。「四大聖人」などという発想も、ある意味でフリーメーソン的ですし、ゲーテやモーツァルトがその芸術作品を使ってメーソン思想を伝えたことも「宗遊」という考え方に通じます。
わたしというより、父である佐久間進会長も含めたサンレー思想そのものにメーソン思想との類似性があることを強く感じる今日この頃です。たとえば、佐久間会長は「人類愛に奉仕する」という一文を記しています。拙著『ハートフル・カンパニー』(三五館)の冒頭にも掲載していますが、次のような内容です。
『 「人類愛に奉仕する〜冠婚葬祭を事業とする者の終局の目的としたい」 佐久間進
人間は皆、同じ自然の恵みを受けながら、ある人は幸福で、ある人は不幸なのは何故か。
裕福な家庭があれば、貧乏な家庭もある。ある国は豊かで、ある国は貧しい。
人間は本来、同じ太陽・月の下で暮らす同根の民。皆、平等で自由で幸せでなければならない。
全人類、等しく真の自由と平和な社会で、生きられるようにしなければならない。
そのためには、今、宗教や民族、国籍や人種、風俗、習慣の違いを超えて、同じ宇宙観、死生観、自然観にのっとって心理的・精神的文化革命を起こす必要があるのではないか。
この地球上に住める全人類の平和で幸福な社会を実現するには、政治や経済あるいは社会の仕組みを改革するだけでは到底解決できるものではない。
人間は、どこから来て、どこに帰るのか。
生命の発生起源と終末を大観する宇宙哲学を基に、改めて構築しなければならない。
人間は、宇宙大自然の中に生かされて生きている。
人間は、宇宙の法則(神)によって生まれ、死んでいく。
人間は、同じ神の子として同根であり、人の魂は、全人類皆兄弟姉妹である。
人間は、神の子として生まれ、目的と使命を終えて死んでいく。
人間は、本来無一物。金も財産も名誉も地位も権力も、この世に持って生まれ来た者は一人もいない。
宇宙無限の世界から無一物で来たのである。死ぬ時もまた、無一物で帰るのである。だから、せめてこの地球上に住めるときは、お互いの心の法則にしたがって、愛し合い、助け合い、励まし合って、共に楽しく、より快適に生きなければならない。
人生の目的と使命を果たすためには、常日頃調和のとれた心、豊かな魂を磨くことに努め、気を養い、精気をみなぎらせ、笑顔を発し、他人にどれくらい多くのホスピタリティ・サービスを施したか、人をどれくらい喜ばせ、和ませ、楽しませ、快適・満足・安心・幸せ・安寧の状態に至らしめたかが、大切なことである。それが、その人の価値を高め、あの世に帰った時は天上極楽界に入れる人になる。
光の世界、安らぎの世界、月の世界に帰れるのである。
やがて世界は一つになる。
だんだん宇宙は近くなる。
この地球上に住める全人類の真の平和と幸福と安寧の社会を願って、新たなる死生観のもと、心理的、精神的、文化革命の必要性を宣言する。
宇宙に輝く光のロマン。
月の世界に魂を送り、先祖の魂を月の光と化して、子孫を守る。
人類同根、全人類、魂のふるさとは一つにして平和な世界が築けるのである。 』
以上のような内容ですが、これはもう、どう考えてもメーソン思想に近いのではないかと思います。もともと父が始めた互助会の「相互扶助」の理念は「友愛」に通じますし、「隣人祭り」も「月面聖塔」も、すべてメーソンの理想と合致します。メーソンはもともと石工ですが、神殿や聖堂づくりが元来の目的であったことから、塔の建設などを大いに好むそうです。また、月を平和のシンボルとする点も同じで、アポロが月の石を持ち帰ったとき、そのほとんどをメーソンの連中が求めたとか。ずばり、月面で月の石を使って塔をつくる、このプランは彼らのテイストに100%マッチするのです!しかも、そこには「普遍思想」「超宗教」「人類共存」などのテーマも込められているわけですから。わたしたちは、月を地球人類の魂の故郷だと考えています。ならば、一つの地球に一つの故郷。ぜひ、彼らとコラボを組んで友愛社会=ハートフル・ソサエティの実現に邁進したいものです。
わたしは、20世紀の映画ではキューブリックの『2001年宇宙の旅』、音楽ではジョン・レノンの「イマジン」が彼らのめざす世界を見事に描いているように思います。そして、いずれフリーメーソンを肯定的に取り上げる内容の本を新書で書こうかと思っています。版元も決まっています。色々と言う人間はいるかもしれませんが、構いません。
古代への憧憬、普遍の追及、そして全体性への希求・・・こうしてみると、フリーメーソンという思想は「ロマン主義」の別名に他ならないことがわかります。そこから生まれた「友愛」というハートフル・キーワード。友愛?大いに結構じゃありませんか!友愛を否定する人間がどこにいますか?
Tonyさんは、フリーメーソンについて、どうお考えですか?よかったら、わたしと一緒にユーアイしませんか?今夜、北九州市八幡のサンレーグランドホテルでの「隣人祭り 秋の観月会」において、今年も「月への送魂」が行なわれました。霊座(レーザー)光線の突き刺さる中秋の名月を見上げながら、世界中が友愛の波動で包まれることを、わたしは願わずにはいられませんでした。
それではTonyさん、シー・ユーアイ・アゲイン!
2009年10月3日 一条真也拝
一条真也ことShinさんへ
「志〜友愛、吾迎夢!」 Shinさん、次々を本を出して、次はついに「フリーメーソン」本ですかあ? しかも、みずからフリーメーソン思想の本質への共感も語る。
いいじゃないですか、その心意気。フリーメーソンであろうが、なかろうが、世界平和と人類の幸福、万物の平安、生命多様の世界が到来するならば大歓迎です。何を隠そう、われらがNPO法人東京自由大学も「友愛大学」なのですよ。
今から11年前の1998年11月25日に、わたしは次のような「東京自由大学設立趣旨」文を書きました。
<21世紀の最大の課題は、いかにして一人一人の個人が深く豊かな知性と感性と愛をもつ心身を自己形成していくかにある。教育がその機能を果たすべきであるが、さまざまな縛りと問題と限界を抱えている既存の学校教育の中ではその課題達成はきわめて困難である。
そこで私たちは、私たち自身を、みずから自由で豊かで深い知性と感性と愛をもつ心身に自己形成してゆくための機会を創りたいと思う。まったく任意の、自由な探求と創造の喜びに満ちた「自由大学」をその機会と場として提供したいと思う。
私たちは、特定の宗教に立脚するものではないが、しかし、宗教本来の精神と役割は大変重要であると考えている。それは、それぞれの歴史的伝統と探求と経験から汲み上げてきた叡知にもとづいて、人間相互の友愛と幸福と世界平和の希求と現実に寄与するものと考えられるからである。私たちはそれぞれの宗教・宗派を超えた、「超宗教」の立場で宗教的伝統とその使命を大切にしたいと願う。そして、人格の根幹をなす霊性の探求と、どこまでも真なるものを究めずにはいない知性と、繊細さや微妙さを鋭く感知する想像力や感性とのより高次な総合とバランスを実現したいと願う。
そのためにも、何よりも自由な探求と表現の場が必要である。自由な探求と表現にもとづく交流の場が必要である。
そして、その探求と表現と交流を支えていくための友愛が必要である。探求する者同士の友愛の共同体が必要である。私たちが生活を営んでいるこの大都市・東京のただ中に、魂のオアシスとしての友愛の共同体が必要なのである。
かくして私たちは、この時代を生きる自由な魂の純粋な欲求として「東京自由大学」の設立をここに発願するものである。
「東京自由大学」では、「教育とは本質的に自己教育であり、自己教育は存在への畏怖・畏敬から始まる。教師とは、経験を積んだ自己教育者であり、それぞれを深い自己教育に導いてくれる先達である」という認識から出発する。そして、(1) ゼロから始まる、いつもゼロに立ち返る、(2) 創造の根源に立ち向かう、(3) 系統立った方法論に依拠しない、いつも臨機応変の方法論なき方法で立ち向かう、をモットーに、勇気をもって前進していきたい。組織形態、運動体としてはNPO(非営利組織)法下のボランタリー・スクール法人として運営および活動をしていきたいと準備している。また地震など、災害・事件時のボランティア的な互助組織として機能できるように行動したい。自由・友愛・信頼・連帯・互助を旗印に進んでいきたい。
みなさんのご参加を心待ちにしています。 1998年11月25日 鎌田東二>
というものです。どうですか? この「友愛」精神は。また、2008年12月31日に書いた「東京自由大学設立の経緯」には、次のような文章もあります。長い文章なので、「友愛」該当箇所だけを抜き出します。
<こうして、東京自由大学は、それぞれが一隻の船に乗って、知と天然の大海に航海していくような、塾でもあり、大学でもあり、結社でもあるような、冒険的な移動漂流教室を共に創造していくこと をめざしている。そしてその探究がこの時代の志を同じくする人たちとの友愛の共同体を力強くかたちづくっていくことをこころから願っている。
友愛を共同化していくためには、世代間の連携が必須になる。幸い、発起人十名のうち、70歳台が横尾龍彦学長を始め二人、60歳台が一人、50歳台が五人、40歳台が一人、30歳台が一人、と世代的ばらつきがあり、特に事務運営の中心をなす事務局長に30歳台の若く活動 的な平方成治氏に就任してもらい、さらに若い世代への橋渡しとなってもらった。まさしく老若男女の共同作業がこれから始まるのである。ぜひ多くの方々に会員となって、あるいはボランテイア・スタッフとして参加していただきたい。そして、自分自身と自分の属する社会を自分たちの手で成熟進化させていきたい。
最後に、この東京自由大学は、かりに地震や災害やさまざまな事件など起こったときに、お互いに見も知らない者同士でも助け合い、 支えあっていくことのできるような互助組織でありたいと思う。ひとがあらゆる垣根を取り払って互いに助け合い、支えあっていけることを阪神淡路大震災はわたしたちに教えてくれた。わたし自身は、この時代にそれぞれ一人一人が内なる観音力を発揮することができた ならば、人間も社会もおおいなる成熟と進化をとげることができると信じている。共にわれらが心中に宿る観音力を行じようではないか。
東京自由大学は、わたしたちの夢を現実に実現していく共同の作業場なのである。
1998年12月31日 鎌田東二>
と、ね。Shinさんとわたしは、やはり「義兄弟」になるだけあって、古くからの「友愛党」党員、というわけですねえ。
それから、先月、わたしは『神と仏の出逢う国』(角川選書、角川学芸出版)という本を出しましたが、その最後の章に、11年前(1998年)に書いた自分の新聞記事を載せました。
<沖縄の音楽家・喜納昌吉氏から「阪神大震災や酒鬼薔薇聖斗事件の起きた神戸で、祈りを中心に置いた祭りをしよう」という呼びかけがあった時、この祈りの催しに全身全霊を打ち込もうと思ったのは、世の乱れを根本的に鎮めるためには祈りと瞑想と芸術的創造が不可欠だと思っていたからでもあるが、私にとってこれは私たち全員の大掛かりな先祖供養になり、それがこの時代の真の平和を築いていく第一歩になると思ったからである。 1998年8月8日、神戸のメリケン・パークで「神戸からの祈り──満月祭コンサート」を行い、平成10(1998)年10月10日、鎌倉の大仏様の前で「神戸からの祈り──東京おひらき祭コンサート」を行う。神戸は平清盛が福原京を置いた港であり、鎌倉は源義朝やその子頼朝が住み、幕府を構えた港である。奇しくも二つの因縁の地で祈りと芸術的創造の集いを持つことは、現代において源平の大和合をはかる試みであるとも言えよう。 私たちは真の平和と新しい時代の友愛の共同体を必要としている。その世界平和と友愛の共同体を築くために大勢の方々の祈りと協力を必要としている。どうか未来の子供たちのためにも力をお貸しください。>(「神戸からの祈り──大中世の世直しを」世界救世教発行の新聞「光明」1998年8月号)
<そのような、「友愛の共同体」づくりの呼びかけをし、またそれをもとに本を出したり、その後も「虹の祭り」「月山炎のまつり」「ワールドピース&プレイヤーデー(WPPD)」などいろいろな試みをやってきたが、世の中は願っている方向ではなく、その反対の方向へ大きく動いていると思わざるを得ない。 この政治経済的に動いている流れと、自分たちの精神世界の中で動いている流れとは、必ずしも一致しているわけではないが、希望を捨てているわけではない。自分たちの心や内面にある価値観や考え方にどのように響いていくことができるかという課題を今もまだまだ背負っている。>
などと、ね。まあ、どうですかねえ? 筋金入りの「友愛」党員でしょう? この「友愛主義者」のわたしを、「フリーメーソン」というなら、どうぞお好きに、という心境ですわ。わたしは、モーツアルトの「フリーメーソンのためのレクイエム」がとりわけ大好きで、これは現代音楽の先駆だと思っているくらいですからね。「フリーメーソン」、結構じゃないですか。どっぷり組んで、万類共存と平和を作り上げましょうよ。
ともかく、問題は、その「友愛」ですが、わたしの「友愛」観は、ルドルフ・シュターナーに淵源します。シュタイナーは、法の下での平等、経済の下での友愛、精神の下での自由、これが人間生活・社会生活にはなくてはならない条件だと考えていたのです。そのシュタイナーの考えにわたしも根本的に賛成なのです。
さらに、本日、2009年10月5日付けの毎日新聞朝刊の「新聞時評」のコラム記事を書いたのですが、記事の前半は干上がったアラル海の環境破壊の問題、そして後半は次のような「友愛」論を書いたのです。
< 翌16日の夕刊に、「鳩山首相誕生」の記事が載った。1週間後の23日には、国連気候変動サミットの開幕式で、鳩山首相が2020年までに1990年比25%の温室効果ガス削減の中期目標を「国際公約」として表明した記事が載った。首相は「鳩山イニシアチブ」として日本の主導的役割をアピールし、一定の国際的評価も得た。だが仮に、この「国際公約」が11年後に実現したとしても、アラル海が元に戻ることはないだろう。
同日の「記者の目」に、「鳩山『理系』政権に期待」「科学思考 生かせ」「硬直した役割分担社会 変えよう」と、「東京大工学部で応用数学を学び、博士号も持つ初の『理系』首相」が登場したことと「政権の中枢を理系が占めた」ことに期待が寄せられている。
確かに「科学思考」は重要だ。だがそれ以上に、鳩山首相の「科学思考」とは言いがたい「友愛志向」に興味と期待を抱く。「友愛精神にのっとった国際関係」や「東アジア共同体構想」の推進を大きな期待を持って見守りたい。そして鳩山首相が、一見政治の場に不釣合いに見える「アイスクリーム」(中曽根元首相の評言)のような、「詩」のような、脱科学的・超文系的政治言語を発信する能力に注目したい。政治空間に詩を、そして、詩の空間に科学を導入することによる相互乗り入れや越境こそが必要だ。
「科学」と「友愛」を切り結んだ先達は宮沢賢治であろう。そして、賢治は科学と芸術と宗教(スピリチュアル)をも結びつけた。21世紀をしなやかにかつしたたかに生きぬくためには、明晰な論理と高い志と自由な想像力と表現力と行動力が必要なのである。>
ここに書いたように、わたしにとって、もう一人の「友愛先達」は宮沢賢治なのですね。賢治こそ、「詩=志」と「科学」と「宗教(スピリチュアリティ)」と「友愛」とを結びつけた21世紀の先駆者でした。こうして、NPO法人東京自由大学は、わたしの中では、シュタイナーと宮沢賢治と出口王仁三郎が先達モデルでしたから、彼らの「友愛精神」はわたしの中にも脈々と脈打っているのですよ。
そういうわけで、Shinさんのお父上の佐久間進氏もShinさんもわたしも、みな「友愛党員」でござります。それこそが、「こころの未来」と社会を切り開く心の力だと思っております。
それはともかく、琵琶湖の100倍もあるアラル海が干上がっている写真の衝撃は物凄いものがありました。9月15日付け毎日新聞夕刊1面トップに、「20世紀最大の環境破壊 干上がるアラル海」という記事が3枚のカラー写真入りで大きく掲載されたのです。記事によると、9年間でアラル海は最大時の2割以下になったそうです。世界第4位の面積を持つアラル海が消滅寸前なのです。
干上がっていった原因は、60年代にソ連が綿花栽培のために流入河川から大量取水したことと、大アラル海と小アラル海の間にダムを建設したことのようですが、実はわたしは、1990年の8月1日に、アラル海近くのバイコヌール宇宙基地でソユーズ10号の打ち上げを見ていたのです。そしてその日の昼食だったか、夕食だったかに、確かアラル海で獲れた魚を食べたと記憶しています。
わたしは、21世に人類が滅びずに生き延びることができるとしたら、環境破壊がバネとなって、21世紀を生き抜く深い「生態智」と「友愛」を生み出し実行することができるかどうかにかかっていると思っています。21世紀に最も必要な知性は、「生態智」(生態系の仕組みを精密・繊細に捉えつつ、それに即応して生きていく科学や伝承文化を総合した知恵とワザ)でしょう。
そんな「生態智」に少しでも近づくために、わたしは1週間に1度、比叡山に上り下りしているのです。そこで、イノシシやサルやシカに出会い、鳥の鳴き声を聞き、谷川のせせらぎや、梢の葉擦れの音を聴く中で、少しずつでも「生態智」が目覚めてくるはずだと確信しつつ、歩いています。比叡山の千日回峰行者は、「生態智」の体現者であるはずだとわたしは確信しています。
そのような「生態智」を探る試みとして、Shinさんも加わってもらって、「ワザ学」の研究をしていますが、先日、10月1日に東邦大学医学部統合生理学教室の有田秀穂教授の研究室でわたしの「ワザ」の測定実験をしたのです。実験内容は、脳波・脳内血流・セロトニン測定実験・心理テスト、などでした。
実験日:2009年10月1日(木)15時30分〜20時
実験場所:東邦大学医学部統合生理学教室・有田秀穂教授研究室(東京都大田区大森西5-21-16)
実験内容:①脳波測定、②脳内血流測定(10部位)、③セロトニン等血液検査(3回、実験直前、実験直後、実験終了30分後)、④心理テスト2回
実験中の被験者の行動:①祝詞奏上、②般若心経読経・各種真言、③楽器演奏(鈴、勾玉、石笛、龍笛、横笛、法螺貝、ハーモニカ)
有田教授は、1948年生まれの研究医で、東京大学医学部を卒業後、東海大学病院にて呼吸の臨床にたずさわり、筑波大学基礎医学系にて呼吸関係の研究を行いました。その間に、ニューヨーク州立大学医学部に留学し、そうした経験から「呼吸法が心身に与える効能は、脳内セロトニン神経の働きで説明可能である」という着想を得、研究チームを作り検証作業を推進したといいます。座禅に伴う呼吸法を生理学的観点から研究して、座禅によって、セロトニンと呼ばれる脳内神経伝達物質のホルモン分泌が活性化され、強化されることを実証し、それを生活の中に活かすための実践活動として、セロトニン道場やNPO国際セロトニントレーニング協会の代表を務める方です。
著作に、『セロトニン欠乏脳』(NHK生活人新書)、『禅と脳』(玄侑宗久氏との共著、大和書房)、『呼吸の事典』(朝倉書店)、『呼吸を変えれば「うつ」はよくなる!』(PHP研究所)、『ウォーキングセラピー』(かんき出版)、『脳からストレスを消す技術』(サンマーク出版)、『朝の5分間脳セロトニン・トレーニング』(かんき出版)、『脳内物質のシステム神経生理学:精神精気のニューロサイエンス』(中外医学社)、『瞑想脳をつくる』(井上ウィマラ氏との共著、佼成出版社)など多数あります。
モノ学・感覚価値研究会やワザ学研究会のメンバーである井上ウィマラ高野山大学准教授(スピリチュアル・ケア学)も有田教授と『瞑想脳をつくる』という、とても面白い本を出しています。一度ぜひお読みください。
有田氏のセロトニン研究と仮説とエビデンスは以下のようなものです。
①ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンが「心の三原色」である。
②ドーパミンは、快楽ややる気を引き起こす神経伝達物質である。
③ノルアドレナリンはストレスに反応する、いわば危険感知物質で、過剰分泌されるとパニック障害やうつを引き起こす。
④セロトニンは、快楽=ドーパミンでもなく、ストレス=ノルアドレナリンでもなく、むしろこの両者を抑制させる第三の神経伝達物質である。それは、精神安定剤のような脳内神経伝達物質で、心のバランスと安定には欠かせないはたらきをする。
⑤歩行と咀嚼と丹田呼吸(腹式呼吸)など、リズム性運動がセロトニン活性に有効。
有田氏はこれらを脳内生理学メカニズムとして実証し、それを実践しています。
その有田教授の実験協力を得て、「ワザ学」研究の一事例として、わたし自身の「ワザ」を実験測定することにしたのです。有田教授が客観的なデータを解析して、わたしが自分の「内感」(実施行為者の内的感覚)を付き合わせて、その「ワザ」の内実と力と効能を捉え、反省し直してみたいのです。
わたしは、「エビデンス・ベイスド・メディソン」(科学的証拠に基づく医学)と、「ナラティブ・ベイスド・メディスン」や「エクルペリアンス・ベイスド・メディソン」(伝承や経験に基づく医療や知識)を橋渡ししたいのです。それが、わたしにできる「友愛」の実践の一つなのです。
Shinさんは、経営や本の出版によって、ぜひその溢れ出るハートフル「友愛」を発揮して「世直し」を進めてください。わたしも負けずに「友愛神道ソングライター」として活動しますゆえ。それでは、次の満月まで。ごきげんよう。
2009年10月5日 鎌田東二拝
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