ムーンサルトレター
2006年2月10日
シンとトニーのムーンサルトレター 第005信
第5信 鎌田東二ことTonyさま いま、金沢のホテルでこの便りを書いています。こちらは大雪で、街中を歩くのにも一苦労です。金沢には当社の冠婚葬祭施設がかなりありますので、毎月訪れております。大好きな街ですが、最も愛する作家である泉鏡花が愛した東茶屋街が特に気に入っています。夜、浅野川のほとりを散歩していると、東茶屋街の灯りがぼんやりと闇の中に浮かび上がってきて、まるで鏡花が描いた物の怪たちが支配する異界のイメージそのものです。 わたしの父は晩年を気候温暖な石垣島で暮らしたいといつも言っておりますが、わたしの晩年は寒くとも金沢を希望します。浅野川を望む場所で、鏡花の如く幻想小説を書いて余生を……