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シンとトニーのムーンサルトレター 第076信

第76信

鎌田東二ことTonyさんへ

 10月20日の夜、Tonyさんから1通のメールが届きました。そこには、「友人が送ってくれた地震予測・食糧難予測のメッセージです」と書かれていました。中央大学総合政策学部教授のイ・ヒョンナン氏が、HP「宇宙人の愛のメッセージ 危機の地球、希望を語る」を立ち上げられ、19日に熊本県天草市で「希望のメッセンジャー宣言」を行いました。YouTube上でも公開されています。わたしも拝見しましたが、画面上からも強い危機感が感じられるメッセージです。わたしも自身のブログに「九州に大地震?」のタイトルで記事を書いたところ、大量のアクセスが寄せられました。

 このメッセージの正式名称は「希望のメッセンジャー声明文〜切迫した食糧危機と地球規模の災害に対する対策促求声明」だそうです。

 動物や宇宙人とも交信しているというイ氏によれば、11月の初旬にも南九州で大地震が起こるそうです。Tonyさんは、「地震予測が当たるかどうかは不明ですが、主張はよく理解できます」とメールに書かれていました。そして、最後に「参考までにお送りします」の一文が・・・・・。えっ、こんな重大なことを「参考までに」って・・・・・。しかも、11月初旬に九州に大地震が起こるっていうし・・・・・。

 ちなみに、『国語という思想』の著者として有名な一橋大教授のイ・ヨンスク氏は、イ・ヒョンナン氏の妹さんだそうです。イ・ヒョンナン氏は、今月末に『動物たちのダイイング・メッセージ』(晃洋書房)を刊行される予定です。

 この手の情報をTonyさんが知らせてくれるのは初めてのことですよね。おそらく、九州で大規模災害が起こるというので、わたしを心配してくれたのでしょう。Tonyさんは神秘学の第一人者であり、ルドルフ・シュタイナーや出口王仁三郎らの「予言」にも精通されているので、ちょっと気になります。

 そういえば、Tonyさんはこのたびの地震・津波・台風の被害も予言されていました。菅前首相が首相就任時に発表した「最小不幸社会」というスローガンに疑問を抱き、「ムーンサルトレター」第59信で次のように述べられているのです。

 「わたしが怖れているものの一つは天災です。気象の変化がもたらす地球環境、居住環境の変動は予測のつかない事態を招きます。そのような変則事態がこれから次々と生起すると思っているので、『最小不幸』などという事態はありえないのではないかと思ってしまうのです」

 ちなみに、この発言は2010年7月のものです。『満月交感 ムーンサルトレター』下巻(水曜社)の295ページにも掲載されています。ですから、Tonyさんから予言の話が出ると、心配になってきます。

 その後、11月8日の11時59分に沖縄で地震が発生しました。マグニチュード6.8、最大震度4というから、かなりの大きさです。幸いにして津波の心配はありませんでしたが、沖縄は海抜が低いので大津波が来たらひとたまりもありませんでした。今後、さらなる大地震が九州を襲うのでしょうか。正直、心配です。なお、イ・ヒョンナン氏からわたし宛に後日メールが届き、ブログでメッセージを紹介したことのお礼を述べられていました。

 さて、話題は変わって、来る11月18日はわが社サンレーの45回目の創立記念日であり、11月は創立記念月です。11月1日の朝、サンレー本社で総合朝礼を行ってから、わたしは松柏園ホテルへ向かいました。ここで、創立45周年記念の「シルバーカラオケ決勝大会」が開催されるのです。会場には、出場者48名、応援者約200名の計250名近くの方々が集いました。

 わたしも、会場の一番後ろの主催者席で聴かせていただきましたもう、プロ顔負けの熱唱に圧倒されっぱなしでした。みなさん、衣装も超豪華でした。会場は大いに盛り上がりました。競技が終了して審査の間に、斉藤美智子さんのミニ・リサイタルを開きました。

 閉会式では、主催者を代表して、わたしが挨拶させていただきました。その後、特別賞の5名、3位、準優勝、優勝の表彰を行いました。受賞者のみなさんは本当に嬉しそうで、わたしも胸が熱くなりました。心をこめて表彰状を読み上げ、トロフィーや記念品や目録をお渡ししました。そして、心をこめて「おめでとうございます」と言いました。帰り際、多くの方々から「社長さん、本当に楽しかったよ。ありがとう!」「ぜひ、また開いて下さいよ!」という声をたくさん掛けていただきました。東日本大震災の発生直後は自粛も考えましたが、やはり開催して良かったです。みなさんの元気は、きっと東北の被災地にも届いたことと思います。

 11月5日は、八幡西区の穴生ドームで「グラウンドゴルフ大会」の決勝大会が開催されました。「シルバーカラオケ大会」と並ぶ、サンレー創立45周年記念のイベントです。あいにくの雨でしたが、ドームですから大丈夫!

 ドームといえば、当日は福岡のヤフードームではパ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージが開催されており、福岡ソフトバンク・ホークスが優勝に大手を掛けていました。図らずも、福岡と北九州の2大ドームで熱戦が繰り広げられました。

 グラウンドゴルフ(Ground Golf)とは、高齢者向けに考案されたスポーツで、日本で誕生しました。 プレイ時間は、標準的なコースで8ホール30分強、グラウンドゴルフ交流大会では、35チーム200人で8ホール回るのに、2時間30分と記録されています。でも、当日の大会では個人戦で競技を行いました。

 ずっと競技を拝見したのですが、想像以上の盛り上がりに驚きました。みなさん、すごく真剣だったので、声をおかけするのは控えました。非常にレベルの高い決勝戦で、ホールインワンもあちらこちらで出ていました。どのコースも白熱したラウンドが繰り広げられ、穴生ドームは熱気ムンムン!みなさん、とても楽しそうで、わたしも60歳になったら挑戦してみたいと思いました。

 閉会式ではわたしが主催者挨拶をした後、優勝者の方に賞状と旅行券、2位と3位の方に賞状と賞品、そして4位から15位の方々に賞品を授与させていただきました。もちろん、血縁や地縁というものが大切ですが、このような好きな趣味で結ばれる「好縁」の絆も強いものがあります。わが社は、これからも、さまざまな「好縁」のイベントを企画し、「有縁社会づくり」のお手伝いをさせていただきたいと改めて思いました。

 そして、サンレー創立45周年を記念して『ホスピタリティ・カンパニー』(三五館)を上梓しました。「サンレーグループの人間尊重経営」というサブタイトルがついています。著者名ですが、「一条真也」ではなく、「佐久間庸和」となっています。ペンネームでは多くの著書を上梓しましたが、本名、そして、サンレーの社長としては、『ハートフル・カンパニー』(三五館)に続く2冊目の出版となります。同書は上下2段組で440ページという大部の本にもかかわらず、幸いにして多くの方に読んでいただけました。また、同書はわが社の創立40周年の記念出版でした。今回の『ホスピタリティ・カンパニー』は、45周年記念出版になります。

 わたしが2001年10月に代表取締役社長に就任してから丸10年が経過し、わが社も無事に45周年を迎えることができました。これも、ひとえに社員各位、関係者のみなさま、そして、何よりもサンレー会員様、お客様のおかげです。心より感謝しております。

 『ホスピタリティ・カンパニー』に収録されている文章は、わたしが社員のみなさんの前で話したメッセージです。いわゆる「社長訓示」と呼ばれているものですね。

 すべてのメッセージは毎月の社内報に掲載してきました。また、わたしのホームページ上にもアップされています。社内向けのメッセージを外に向けてもオープンにしているわけです。いわば、「公開社長訓示」と言えるでしょう。

 書名にある「ホスピタリティ」は今後の会社のみならず、社会全体の最大のキーワードであると思います。キリスト教の「愛」、仏教の「慈悲」、また儒教の「仁」まで含めて、すべての人類を幸福にするための思想における最大公約数とは、おそらく「思いやり」の一語に集約されるでしょう。そして、その「思いやり」を形にしたものが「礼」や「ホスピタリティ」です。「礼」と「ホスピタリティ」は、わが社のキーワードになっています。洋の東西の違いはあれど、「礼」も「ホスピタリティ」もともに、「思いやり」という人間の心の働きで最も価値のあるものを形にすることに他なりません。

 もともと「ホスピタリティ」は、わが社の創業者である佐久間進会長がずいぶん以前から使っていた言葉です。最近でこそ流行語になっていますが、佐久間会長は50年以上も前から日常的に使い、わが社の経営理念にも取り入れていました。佐久間会長が生まれた昭和10年に日本にYMCAホテル学校が誕生し、「ホスピタリティ」という言葉も日本に入ってきたようです。大学を卒業してからYMCAホテル学校に通った佐久間会長は、その語になじみました。そして、後に社団法人・全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)の初代会長としてアメリカのフューネラル大会において講演した際に、「冠婚葬祭業はホスピタリティ産業である」と述べたそうです。初めて、「冠婚葬祭」と「ホスピタリティ」が結びついた記念すべき瞬間でした。一般には、ホテル業やレストラン業などをホスピタリティ産業と呼んでいました。佐久間会長が、日本における「ホスピタリティ」の概念を拡大したわけです。

 佐久間会長は、社団法人・北九州市観光協会の会長を永く務めました。そのとき、「百万にこにこホスピタリティ運動」をスタートさせ、観光ボランティアなど、市民参加のさまざまな企画を実施し、ホスピタリティが北九州市の大きな魅力として定着するよう、運動を通して全市的にアピールしました。今年も、「百万にこにこホスピタリティ運動」のポスターが届きました。わたしは、北九州市が「ホスピタリティ・シティ」となることを願い、そしてわが社は「ホスピタリティ・カンパニー」をめざしています。そういう想いを込めて、『ホスピタリティ・カンパニー』という書名にしました。

 Tonyさんにも1冊送らせていただきますので、御笑読のうえ御批判下されば幸いです。それでは次の満月まで、ごきげんよう。オルボワール!

2011年11月12日 一条真也拝

一条真也ことShinさんへ

 今回のムーンサルトレターは、山形県鶴岡市庄内空港の搭乗待合室で書き始めます。昨日、鶴岡国際村で行われた鶴岡致道大学で、「縄文文化と神仏習合文化の底力」と題して講演をしたのです。ありがたいことに、同志的な友人で地元の山形県議会議員の草島進一さんが聞きにきてくれ、ともに懇親会に出席しました。

 草島進一さんは、1995年1月から「神戸元気村」の副代表(カヌーの船尾:スターン、通称)としてまる3年間活動していました。そして、1998年1月、その活動に区切りをつけて、地元の鶴岡に帰る途中、京都の鳥料理や「鳥居本」で開催した「神戸からの祈り」の第1回ミーティングで会ったのが最初の出会いでした。

 この「神戸からの祈り」は、1988年8月8日にメリケンパークで、10月10日(平成10年10月10日)に鎌倉の大仏・高徳院で「東京おひらきまつり」として開催しました。その時の出会いが、草島さんの市会議員や県会議員の活動や「災害NGO月山元気村」や、NPO法人東京自由大学の活動につながり、今に至るも深いつながりになっていると思うと感慨無量のものがあります。この「神戸からの祈り」や「東京おひらきまつり」や「NPO法人東京自由大学」の活動は、Shinさんの提唱する「有縁社会」のわたしたちなりの実践でもありました。

 なので、Shinさんの主張には基本的に賛意を表するものです。と同時に、わたしとしては、「無縁社会」という社会現象にも、ある意味性を見い出さざるを得ません。というのも、「無縁」にも、大変重要な創造的な局面があると考えているからです。

 そもそも、「無縁」概念を「自由」や「公界」と「楽」と絡めて論じたのが、中沢新一氏の叔父さんに当たる網野善彦氏の『無縁・公界・楽——日本中世の自由と平和』(平凡社ライブラリー150)でした。網野氏は、「無縁」が駆け込み寺や四条河原など、一種の治外法権的なアジールであり、そうした場に発生する主従関係や税の取り立てなどから切り離された中世的な「自由と平和」について実証的かつ理論体系的にポジティブに描き出すことに成功し、中世像を一新しました。

 こうして、中世社会においては、それまでの律令体制的な社会的「縁」から「自由」になって「法外」な活動を展開することが可能になりました。それは、一方では社会秩序の混乱であり、戦乱であり、アウトローでもありますが、もう一方では活動の「自由」と「新縁の構築」を生み出したわけです。そのような新縁の新たな結び方を提唱したのが、葬儀に関わった遁世僧や、法然や親鸞や一遍などの念仏層や、日蓮や道元らのいわゆる「鎌倉新仏教」や、唯一宗源神道を提唱した吉田兼倶らでした。

 したがって、「無縁」にも、消極的無縁と新しい縁の構築=新縁結びにつながる創造的・積極的無縁があることになりますね。

 そのような、「自由」と「新縁結び」に連動するような「無縁」の一面を、わたしとしては評価し、大事にしたいと考えています。なぜらな、これまでの悪しき縁やしがらみから「自由」になって、新しい社会づくりを志す人びと(誤解を受けやすいわたしの言い方では「海賊や山賊」)と共に「世直し」することが、少年時代からのわたしのやりたいことなのですから。

 わたしにとって、『久高オデッセイ』の監督・大重潤一郎さんや音楽家の岡野弘幹さんや、羽黒山伏でもある草島進一さんなどは、そういう意味での海賊であり山賊の仲間です。言ってみれば、鹿児島と香川生まれの大重さんと岡野さんは現代海賊、鶴岡と徳島生まれ育ちで羽黒山伏でもあり東山修験道者である草島さんとわたしは現代山賊ですわ。別に、この現代海賊や山賊は、悪いことをするのではなく、むしろありうべき新しい社会を構想し、その実践に情熱と知と行動を注ぐ一種の「奇人・変人」、現代社会の変わり者、ストレンジャーということになりましょうか。わたしは、子供の頃からそんな意識を持っていましたから、誰に何と言われようと、「世直し」への意思を持ち続けています。

 そんな「山賊(山伏)仲間」の草島進一さんが学び進めている「ナチュラス・ステップ」は、この数年わたしが問題提起してきた「モノ学」や「生態智」と密接につながっています。そうした持続可能な循環型バランス維持社会の方向こそが、人類の未来だと考えています。そうした方向にShinさんの言う「有縁社会」も連動していると確信しています。

 そんな方向で書いた新著『現代神道論——霊性と生態智の探究』(春秋社)と『遠野物語と源氏物語——物語の発生する場所とこころ』(創元社)の見本が、ともにあさって出来てきます。『現代神道論』の方は、出来てき次第、神田明神(神田神社)に献本するつもりです。というのも、この本の「あとがき」にも書いたように、この本は2008年に行なった「神田明神塾」での連続講義がきっかけでできたからです。その折の講義は、その年に起こった秋葉原で起こった事件、加藤智大被告の殺傷事件の話から始まりました。

 加藤智大被告は、1982年生まれで、神戸での連続児童殺傷事件の被告酒鬼薔薇聖斗と同級生でした。彼らは、17歳の時に「キレル17歳」として社会問題化した「問題」の世代で、息子も同級生でした。わたしは酒鬼薔薇や加藤被告の両親とほとんど同世代でしたから、この「問題」は大変深刻にわが事として受け止めました。ちょうど1997年に酒鬼薔薇事件が起きた年、たまたまわたしは埼玉県大宮市の大成中学校のPTA会長をしていたのです。そしてそれからきっかけになって、翌年、1998年からわたしは「神道ソングライター」として歌い始めました。自分の息子や娘たちの世代に向かって、素で無手勝流で向き合わなければ先がないという危機感から始まったのが「神道ソングライター」の活動でした。

 そんな活動がいろいろなことにつながり、わが新縁結びとなり、「有縁ネットワーク」を生み出してきたと思っています。「神道ソングライター」の活動も13年。その時、中三から高一になっていた子供たちも28歳か29歳。まもなく30歳になり、自分たちの子供を持ち始め、次の世代につながってきています。また2008年に、神田明神でわたしの連続講義の世話をしてくれていた清水祥彦さんは、この間に、禰宜さんから権宮司さんに昇任しました。いろいろな動きがある中で、2011年、今年は日本の社会にとって大きな転換の年になったと思っています。

 ともかく、『現代神道論——霊性と生態智の探究の』内容は、もちろん、神田明神塾で話をした内容も含まれていますが、しかし、本年の「3・11」(東日本大震災)と「9・3」(西日本大水害)後のことがメインとなり、書き下ろしに近いようなものとなりました。

 ここでわたしは、持論の「現代大中世論」や「スパイラル史観」(歴史は直線的に発展ないし変化していくのではなく、螺旋構造的に前代および前々代の課題を隔世遺伝的に延引させ引き継ぎながら拡大再生産していくという史観)を問題提起しました。

 <わたしが主張する現代大中世論とは、一言で言えば、4つのチ縁の崩壊現象とそれを踏まえた再建への課題を指している。それはまず、地縁・血縁・知縁・霊縁という4つのチ縁の崩壊現象として現れてくる。限界集落を抱える地域共同体やコミュニティの崩壊。家族の絆の希薄化と崩壊。知識や情報の揺らぎと不確定さ。「葬式は要らない」とか「無縁社会」と呼ばれるような先祖祭祀や祖先崇拝などの観念や紐帯や儀礼が意味と力を持たなくなった状況。物質的基盤から霊的・スピリチュアルなつながりまで、すべてのレベルでチ縁が崩落し、新たな効果的な再建策やグランドデザインを生み出せないでいるのが今日の現状である。>(鎌田東二『現代神道論』春秋社、2011年11月23日刊)などと。

 そして、そこからの再建、再生、復活の道のりが新しく創出されたのが日本中世であり、現代から向かうべき未来なのです。この本の冒頭は「3・11」の那智の滝の前での大震災の体験で、結びは「9・3」の天河大辨財天社の水害被害のことを取り上げました。

 Shinさんも、今月、サンレー創立45周年記念の出版物『ホスピタリティ・カンパニー』(三五館)を本名で出しましたね。いつも思いますが、凄いですね、その筆力と精力と志の強さは。内容を読んで思ったのですが、サンレーの社員はいつも最新の思想と情報に基づく「社長訓示」を受け取っているのですね。「社長訓示」をそのまま1冊の本にできるなんて、凄いことですよ。なかなかできることではありません。たいしたものです。

 読んでいて、いろいろと共感できることがありましたが、特にいま大事だと思ったのは、162頁の「新しい組み合わせを探せ」という「社長訓示」でした。これは、今、日本の喫緊の取り組むべきことだと思いました。

 縄文時代の昔から、ものづくりについては日本はかなりな想像力と創造力を発揮してきましたから、その技術水準やポテンシャルパワーはすごいものがあると確信しています。だからこそ、中国大陸・朝鮮半島からも西洋からも新文明を貪欲に受け入れながらも日本流に取り込み、「習合」できたのだと思います。そのような「習合文化」の集積回路であり、ハイブリッド・クロスポイントが日本列島ですね。

 そんな日本で、今、必要なのは、新しい「習合力」を発揮することだと思います。伝統と革新の同起的連動です。わが「神道ソングライター」の活動も、そんな新しい「習合力」によるスサノヲ的和歌の伝統とロックやフォークやレゲエを含むJPOPとのハイブリッドであります。

 ところで、わたしは、11月6日に、近藤高弘さんが主宰する「無限の会」の事務局長の氏家博昭さんと一緒に相馬市の原発被災者の清水寺住職の林心澄さんの仮設寺に行って、「命のウツワ」を届けました。その日はずっと雨が降り続いていましたが、途中、通過した「霊山」の紅葉が実がとても美しく心に沁みました。放射性物質の汚染度の高い地域にもかかわらず、今年は豊作の上に紅葉もきれいだということです。ほんとうに皮肉なかなしい事態ですが。

 福島原発から9キロのところに立地していた熊野山蓮華院清水寺(真言宗豊山派、福島県双葉郡浪江町)の林心澄住職さんは、原発災害を受けた寺院連合の事務局長をしています。この夏、7月24日、東京大学仏教青年会で開催された「宗教者災害支援連絡会・第4回情報交換会」(代表:島薗進氏)において、わたしは林心澄住職の被災地からの報告を聞いたのでした。そしてその席上、近藤高弘氏が中心になって進めている「命のウツワ」プロジェクトの話をし、それを受け取っていただけるかどうか確認したのです。林さんは、喜んで受け取ってくれるということでしたので、準備ができたらお届けすると約束したのです。それから、3ヶ月余、ようやくにして、近藤さんが精魂込めて焼いたお茶碗40個と湯飲み茶わん80個を届けることができました。これを、被災した檀家の方々に分けていただくことになっています。

清水寺林心澄住職に命のウツワを届ける

清水寺林心澄住職に命のウツワを届ける仮設寺の仏壇

仮設寺の仏壇命のウツワのお茶碗と湯呑茶碗と巾着袋

命のウツワのお茶碗と湯呑茶碗と巾着袋林心澄住職夫妻と

林心澄住職夫妻と
 わたしは、「命のウツワ」を届け、仮設寺の仏壇の前で般若心経を奉唱し、石笛・横笛・法螺貝を奉奏した後、ゆっくりと林住職からお話をうかがいまた。浪江町の被災者は何度か一時帰宅を許可されていて、林住職は通算7回帰宅したとのことですが、その際、地域の多くの方が家の仏壇の位牌を持ち帰ったというのです。東北は民間信仰や伝統文化の強く保持されてきたところではありますが、ほとんどの人が「葬式は要らない」とも「戒名は要らない」とも思っていないのです。その反対に、多くの人が「菩提寺の住職にお経を上げてもらいたい」、「戒名を付けてほしい」、「位牌を作りたい」と言っていると林住職みずからの体験を語ってくれました。Shinさんにも、その話を聞いてもらいたかったですね。

 福島第一原発から10キロ圏の浪江町は少なくとも30年は故郷に帰ることはできないといわれていますが、もちろん、30年後に帰ることのできる保証はありません。その時点で、コミュニティがどうなっているか、予測がつかないからです。そこで、原発被災地区のお寺の住職さんたちが相談して、すべての寺院が集まって一つの宗教都市を作る「高野山構想」を考えたらしいのですが、行政がどこに拠点を置くかわからないことや、各檀家との交通や交流のありようなどから、その構想は立ち消えになったといいます。


 わたしたちは、林住職に案内されて、相馬市の仮設住宅を巡回しました。第1から第9までの仮設住宅は、およそ1000軒はありました。浪江町の92軒の方々は第8応急仮設住宅に入居しています。けれども、その周囲は丘陵から山に近い地域で、近くには店舗の一つもありません。そこで、つい最近、美容室やスーパーや魚屋さんや郵便局の仮設ができて、一部オープンしました。そこも見学したが、やはりこの冬が心配です。最低限の生活を維持することと「心のケア」を含む一定の生活の質を保ちながら潤いのある暮らしをしていくことの間に解決しなければならないさまざまな問題があるからです。

 昨日、NHKスペシャルで東日本大震災の被災地の方々の中で起こってきている自殺の問題が取り上げられていましたが、大変深刻な事態に直面しています。予想された事態ではありましたが、この問題に国も地方自治体も対策と対応に立ち遅れていると思います。こころの問題は微妙で複雑でいつなんどきどうなるかわからない不安定さと不測を抱えています。そこに立ち向かわなければならないのです。臨機応変に。しかも迅速に。

 確かに、巨大な仮設住宅群のそれぞれの群には必ず集会所が建てられています。しかしながら、そこでどのようなコミュニティの交流や外部との交流が図られるかが問題です。いろいろな意味で、孤立することがないように気を配る必要がありますし、それこそ「有縁・つながり」と「心の熱(=ハートフル)」が必要です。

 浪江町の人たちが入っている第8応急仮設住宅の集会所の入り口に、10月26日と27日の両日、仙台仏教青年会の「念珠作り」のチラシが貼られていました。亡くなった方の供養のために、仙台から青年僧侶たちがボランティアで念珠作りに来ているのだと思いました。そのような交流も含め、今後組織的で継続的な交流や支援なしには復興と自立は困難ではないかと思いました。

 そのあと、林住職さんに松川浦など被災地区を案内してもらいましたが、復旧・復興までにはまだまだだと感じました。6月18日に、羽黒山伏の大先達の星野文紘さんや草島進一さんたちと100日慰霊祭を中村神社と長友公園で行なった際にこの地に足を運びましたが、それから5ヶ月ほど経っているにもかかわらず、予想以上に動きが鈍いように思いました。

 これは、国や県や市などから来る行政の問題なのか、それと絡む生活再建や産業再建の見取り図がまだまだ描けないことが問題なのか、その問題の所在を含め、さらなる追跡調査と問題点の洗い出しが必要です。やるべきことは山積していますが、その中で、自分たちのできること、また支縁‐支援を継続的に続けていきたいと決意を新たにした次第です。それぞれの「有縁社会」づくりに共に進んで行きましょう。今年もまもなく終わりますが、なんとかこの冬を乗り越えましょう。

 最後に、今週と来週、次のような催しを行ないます。忙しくて来られないかと思いますが、関西や関東に興味のある方がいましたら、ご案内ください。

1)癒し空間の総合的研究・平安京生態智/寒川神社研究会
・日時:2011年11月17日(木)14時〜17時
・場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室(京都市左京区吉田下阿達町46、川端通り荒神橋東詰め)
・テーマ:縄文遺跡と延喜式内社
 〜縄文中期最大の住居跡・岡田遺跡と寒川神社、勝坂遺跡と有鹿神社との関係について
・講師:小林達雄(國學院大學名誉教授・縄文考古学)(講演60分+討議60分)
・発表:鎌田東二「癒し空間と延喜式内社の研究について」(発表30分+討議30分)

2)京都府との共同企画
・日時:2011年11月23日(水・祝日)13時〜17時(受付開始 12:30〜)
・場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
・テーマ:「ワザとこころ〜葵祭から読み解く」
・第一部 映像上映と講演
 上映 『京都歳時記 葵祭』 (30分)
 講演「京の祭りと沖縄の祭りを比較して」(20分)
  大重潤一郎(映画監督、NPO法人沖縄映像文化研究所理事長)
・第二部 パネルディスカッション
 「下鴨神社(賀茂御祖神社)の葵祭と神饌」
  嵯峨井建(賀茂御祖神社禰宜・神社祭祀研究・京都大学非常勤講師)
 「上賀茂神社(賀茂別雷神社)の葵祭と競馬と葵」
  村松晃男(茂別雷神社権禰宜・NPO法人葵プロジェクト理事・事務局長)
 「京の祭りのワザとこころを探る」
  やまだようこ(京都大学大学院教育学研究科教授・発達心理学)
 司会 鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学)
*この催しのみ要予約

3)第2回こころ観+ワザ学研究会+負の感情研究会
・日時:11月24日(木)10時30分〜12時10分/13時〜17時
・場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
・テーマ「沖縄・久高島のワザとこころ〜その過去と現在」
・映画上映:大重潤一郎監督作品
 「久高オデッセイ 第二部 生章」(70分)「水の心」(30分)
・シンポジウム:
 パネリスト:
  大重潤一郎(NPO沖縄映像文化研究所理事長・映画監督)
  「久高島のワザとこころ」
 須藤義人(沖縄大学専任講師・映像民俗学)  「沖縄の民俗文化・祭祀芸能文化におけるワザの伝承について」
 坂本清治(久高島留学センター代表)
  「久高島山村留学と負の感情の乗り越えと成長」
 指定討論者 やまだようこ(京都大学教育学研究科教授・発達心理学)
 パネル・ディスカッション+質疑応答
 司会進行  鎌田東二

4)「東日本大震災復興支援4 門天プロジェクト〜3・11以後を考える〜いま、アートにできること!」
日時:2011年11月27日(日)18時〜21時(開場:17時30分)
場所:門仲天井ホール(東京都江東区門前仲町1-20-3-8F、tel 03-3641-8275
営団地下鉄門前仲町駅3番出口から徒歩3分、都営地下鉄大江戸線門前仲町駅6番出口から徒歩1分)
プログラム:
トーク&音楽:テーマ「震災復興とスピリチュアリティ」
  鎌田東二+金大偉(アーティスト)+倉林靖(美術評論)
ライブ
 クレーン謙(ギター&ヴォーカル)
金大偉(ピアノ&サーランギ)
k.mical&a qui avec Gabrel(ピアノ&ピアニカ/アコーディオン)
*要予約:gayu-jin@hotmail.co.jp

2011年11月14日 鎌田東二拝